地引網は海の宝箱?!

地引網は海の宝箱?!

地引網がもたらす、意外な恩恵!

地引網とは、単なる漁に見えて、実はたくさんのメリットを有しています。
地引網はその特性上、実施には高度な技術や機材、漁船といったものがほとんど必要ありません。
そのかわり、多くの人手を必要とするのです。
それすなわち、小中学生といった、漁に対しての前提知識がない人でも戦力になり、応募母数多さも相まって、漁の中でトップレベルに一般人の参入のハードルが低いのです。
つまり、地引網は最も一般人が近くで体験できる、身近な漁なのです。

最近の若者が虫が触れない理由、それは人と自然の極端な分断によって起こっています。
昔は夏休みといえば、山で虫取りをするのが当たり前だったのに、今の若者の夏休みは友達とオンラインでゲームをするのが当たり前になっています。
身近な野山や小川、用水路はどんどん私有地になっていき、若者が自然と触れ合う機会が極端に減少しています。
これは非常にまずい状況です。
自然と触れ合わずして育った若者は、自然のありがたみを実感せずに育ちます。
すると一次産業に参入しない若者は加速度的に増えていき、行きすぎた自然開発が横行し、それを止める人もいなくなります。
そうなるともう、完全に終わりです。
しかし、地引網にはそんな恐ろしい未来を止める救世主になり得る力があります。
地引網に参加して得られる「楽しさ」や「達成感」は本物です。
ゲームでは得られない生の実感をもたらしてくれます。
家から出ない若者がこんなにも楽しい体験をすれば、間違いなく自然の虜になるでしょう!
そうです。
地引網は若者と自然をくっ付ける接着剤のような働きをするのです。

そして、地引網にはもう一つの特性があります。
それが「地引網で獲れる魚にはその地域の生態系がそのまま反映される」という点です。
地引網は「漁」なので、その日その時で獲れる魚が変わります。
地引網は表層から低層にかけて生息する一定範囲の魚を文字通り一網打尽にします。
つまり、その地域一帯の生態系(魚種別の生息割合)がまるっきりわかるのです。
地引網をすればその地域に生息する多くの魚種を炙り出せるので、気候変動によって分布や繁殖期、生育に変化が起こる魚の具体的な変化に、いち早く気づくことができるのです。
これは本当に凄いことです。
自然を相手にする一次産業者や科学者にとって、「変化」を捉えること、これはとても重要な役割を持っています。
具体的な数値の推移を辿れば、自ずと目の見えないところで何が起きているのかに気づけるし、それを利用すれば課題の解決、新たな脅威の察知ができ、莫大な利益や換えが効かない学術的意義をもたらします。

他にも、地引網には獲れる魚の種類、大きさ、数など、かなりの運要素が絡みます。
それはつまり、「目当てではない魚」や「初めて食べる魚」と出会うきっかけになります。
魚を選別し、持ち帰る順番はじゃんけんなり、あみだくじなり色々ありますが、何はともあれ、「食べたことのない魚を持ち帰ることになった」というシチュエーションは地引網体験では頻繁に起きるイベントであり、もはやそれが醍醐味と言っても過言ではありません。
それがどう日本の漁業へのメリットになるかというと、ズバリ、「未利用魚問題」の解決に繋がるのです。
皆さんは未利用魚問題をご存知ですか?
今の日本の漁業産業には「傷などにより見た目が悪い」、「サイズがまばらで販売規格に達しなかった」、「せっかく獲ったのに、梱包や輸送コストを考えると原価割れてしまう」など、様々な理由で、「獲ったのにそのまま捨てられてしまう魚」が発生しているのです。
それらの問題は地産地消の強化によって解消されます。
しかし、地産地消の市場で売られる「得体の知れない魚」を買う人はなかなかいません。
結果、売れ残って廃棄されてしまいます。
ですが、「得体の知れない魚」を地引網で「初めて食べたけど、とても美味しかった魚」に変えることで、消費者の魚への理解を深め、購買意欲を促進させることができます。
そうすれば、地域の地産地消はより活発化し、漁業市場はかつての賑やかさを取り戻すのです。

そうです。
地引網は経済、学問双方にとってのキーとなる、最高の宝箱なのです!

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