『2023 北木島大遠征!』活動レポート第3段   《定置網編③》

   『2023 北木島大遠征!』活動レポート第3段   《定置網編③》

この記事は『2023 北木島大遠征!』《定置網編②》の続きです。

レポート④:いよいよお魚とご対面!(続き)

今回の定置網では『マダイ』と『カワハギ』が特に多く獲れました。
地球温暖化の影響で瀬戸内海の『マダイ』が増えていることは知っていましたが、カワハギ類も増えているとは意外でした。
おそらく、『マダイ』と同じく地球温暖化によって近年大量発生しているクラゲ類を捕食し、カワハギ類が増えているのだと推測できます。

『ヒラ』と呼ばれる大型のニシンの仲間が5匹ほど獲れました。
この魚は本来、有明海に多く生息する魚です。
酸素要求量が他の魚より多いようで、網の中で唯一『ヒラ』だけが死んだ状態で見つかりました。
獲れた『ヒラ』は全て死んでおり、目が濁っていて腐敗していました。
こういった腐敗してしまった個体や、まだ小さい幼魚は衛生面や資源保護の観点から海に戻します。

絶滅危惧Ⅱ類に指定されている、ナルトビエイが獲れました。
これぞ瀬戸内海の定置網の醍醐味と言って良いでしょう。
ナルトビエイはアサリなどの貝類を捕食するため、多くの漁師さんから忌避されており、アカエイ同様に駆除対象とされています。
『勇和水産』さんはエイ類の駆除はしておらず、大きい個体がかかった場合は商品として持ち帰るそうです。
こうしたエイ類は尻尾の付け根に『尾棘(ビキョク)』という鋭い毒の棘を持っています。
この棘には返しがついており、非常に危険です。
そのため、運搬は慎重に行います。

この網にはマダイやヒラメが入っています。
どちらも食卓でよく見かける魚ですが、持ち方に気をつけないと大変危険です。
ヒラメはその食性上、とても鋭い牙を持っていて、人の皮膚をたやすく切り裂きます。
おまけに生命力が高いため、持った時よく暴れます。
マダイは裁縫に使う針と遜色ない尖った背鰭を持っています。
釣り上げたマダイの背鰭でゴムボートに穴が開く、なんて事件をよく耳にします。
こう言った魚は落ち着いて、且つ素早く運び、箱に入れましょう。

サメやエイの仲間(軟骨魚類)は浮力調節の為の浮き袋を持っていません。
代わりに肝臓に大量に油が詰まっており、これで浮力調整をしています。
これがサプリメントなどで有名な「肝油」ですね。
また、浮力調整に空気を使わない関係で、深海と浅瀬を行き来することがますます。

彼らは体液に尿素を含むことで、体外との浸透圧の差を調節しています。
そのため、これらの魚は死んでから時間が経過すると体内の尿素がアンモニアに変わり、酷い悪臭を放つのです。
そのせいで、エイやサメの多くは加工が難しく、その上瀬戸内海ではエイが大量発生しているので漁師から忌避されるのにも納得です。
これらの魚はまさしく、低利用魚の代表種と言えるでしょう。

今回、大型のエイはなるべく海に戻し、小型のエイ(『ナルトビエイ』と『アカエイ』)は標本用に部員が持ち帰りました。

魚を全て掬い終わった後の魚コンテナ。
マダコやイカが吐いた墨によって、氷が黒くなっています。

獲れた魚はブルーシートの上に魚種別で並べていきます。
こうすることで、資源管理、調査の観点で非常に役に立ちます。
今回の成果は地引網と比べ、多くの相違点を見つける貴重な資料となりました。
魚種の違い、サイズの違い、獲れる割合の違いなどなど…
その海域の生態系を紐解いていく鍵が、この体験には散りばめられていました。

これが今回の全ての成果(持ち帰った魚)です。
魚種一覧(多かった順)
・マダイ×28
・カワハギ×27
・コイチ×14
・ヒラメ×7
・イシモチ×6
・スズキ×4
・ウマズラハギ×3
・アカゲタ×2
・キジハタ×2
・コショウダイ×2
・ナルトビエイ×2
・ウミタナゴ×2
・クロダイ×1
・アカエイ×1(網にはもっといた)
・ブリ(ハマチ)×1
・カミナリイカ×1
・マダコ×1
・ヒラ×1(網にはもっといた)
・メイタガレイ×1
・イシガレイ×1
・セトダイ×1
合計21種類、107匹

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